スカーレット・ウィザード
名言集


ケリー・クーア

「いいや。あんたはそんな種類の女じゃない。が、あいにくとこの俺も、黙って言いなりになるような男じゃない」
「女王。俺はあんたが嫌いじゃない。他人事ながら、王座を大切にと声援を送ってやってもいい。しかし、これだけはお断りだ」
「どれもこれもだ。気に入らない。だがな、中でも最悪に気に入らないのは、惚れてもいない女と結婚しなきゃならないってとこだ」
「甘いぜ。男の純情を計算しろよ。そもそも、どうして俺なんだ? 結局、あんたが欲しいのはただの弾よけか、目くらましの役目を引き受ける男だろう。俺でなきゃいけない理由はないはずだ」
「つくづく無茶を言う。金で飼われろと言い放っておきながら、誇りは忘れてもらっちゃ困るって?」
「鼻持ちならない金持ち女が、気まぐれで人を飼うつもりなんだろうと思ったが、そうでもなさそうだ。あんたはずいぶん高く俺を評価してくれたらしい」
「それならこれもわかるはずだ。こういうやり方は俺の流儀じゃない。いくら熱心に誘ってくれても、この状況でうんとは言えない。そんなことをしたら、俺は売り渡してはいけないものまで売ることになる。あんたのいう、誇りってやつをだ」
「これが慌てずにいられるか。いくら美人でも頭のおかしいのはまっぴら御免だ」
「あんなものはタフ・ガイで充分だ。でなければ、おまえ以上のクレイジー野郎だ。俺に追いつくまで、その重力に耐えるつもりなんだぞ」
「まったく、ひでえ冗談だ……」

ジャスミン・ミリディアナ・ジェム・クーア

「身分や財産は必要ない。見てくれなんかはそれに輪を掛けてどうでもいい。殺しても死なないくらいしぶとく、頑丈で、国家機関や政財界にはまったく無縁の男であること、腕が立つことはもちろんだが、何より信用がおけること。こんな条件を満たす男は表の世界にはいない。もう一つあげるとするなら、これは単なる契約だと割り切れるだけの冷めた目を持っている男でなければ困る。有頂天になるような頭の悪いのは論外。かといって覇気のないのも問題外。ただ、正当な報酬を約束する契約なら、それも期限の決まっている間だけなら、妥協して飼われてやってもいい。そう言いきれるだけの自信と気概を持っている男が欲しかった」

ダイアナ・イレヴンス

「散髪をしようとして芝刈り機を持ち出したりする人も立派におかしいと言えるでしょうけど、結婚をしたくて婚姻届を持ち出すことの、どこがそんなにおかしいというのかしら? 不思議だわ。まったくもって理屈に合わないわ」
「あなたも厄介な人に惚れ込まれたのね。ある意味、連邦軍より相手が悪いわよ」
「みんな、わたしの魅力に参ってしまうのよ。人間流に言うならね」
「全長四十メートル。何度見ても全長四十メートル。その中にKSと重力波エンジン、最新鋭機を上回る推進駆動機関、それに恐らくは戦闘能力も持たせている。猫の身体に馬の心臓と牛の胃袋とカモシカの筋肉を強引に詰め込んだようなものよ。ライオンの爪もね。どうやってしてのけたのか、ぜひとも教えてもらいたいくらいだわ。でも、これ以上は無理。慣性相殺までは手が回るはずがない。――未知数が多いから断言は避けるけれど、最低でも八倍以上のGがかかっているんじゃないかしら? ずいぶん丈夫な女王様ね」
「ケリー。同じ宇宙を飛ぶ人でも、適正は様々だわ。あなたと彼女の場合は、どちらが優れているかではなくて、明らかに種類が違うのよ。あなたは船乗り、彼女は戦闘機乗りだわ」
「機械は人間を慰めたりしないものよ。単に事実を述べるだけ」



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